生活はそれなり、でもそれでいい。

カナダに来てもう少しで1年が経とうとしているが、正直なところカナダに対する気持ちはフラットだ。局所的には好き嫌いがあるのだけれど、トータルで言うとまあぼちぼち、というのが素直な気持ち。
いっぽうで日本の、とくに大好きで住んでいた京都に対する愛着はなかなか捨てられるものではなく、時折京都での日々が恋しくなる。自転車で好きな店に行けて、徒歩圏内に有り余るほどの歴史とカルチャーがあり、どこを見ても山か川があって自然が身近な京都。京都で育っていく娘も見てみたかった。


けれども、あらためて考えてみると最初から京都が好きだったわけでもなかった。すっかり忘れていたけど……。
元々、京都は消去法で選んだ。進学先を考えるときに「実家から通えて、国公立で、理系でデザインが学べて……」といった感じで最後に残ったのが京都の大学、というくらいだった。
それで最初の1,2年は生活と学業で精一杯で、好き嫌いを考えることはなかった。(そもそも街に対して好きとか嫌いとか判断する発想もなかった)それでも3年くらい京都にいて、ふと気がつくと京都が好きな自分がいた。


それを思うと、カナダのことを好きになるにはもう少し時間が必要なのかもしれないな、とごく自然に腑に落ちた。
好きになりたいのになれない自分を残念だと感じていたけど、そんなにすぐに好きになるものでもないと気づくとすこし気持ちが楽になった。好きな街に住むべきだ、という思い込みもあったのだろう。


今は「なんとかやり過ごしている」というような日々だけど、そのうち愛着は湧くよと自分を励ましながら過ごしていこうと思う。それで数年後のふとした瞬間にカナダのこと好きだな、と思えたらいいな。